バックナンバー 第71回~第80回

第71回 最近何故かイライラしやすい人にオススメの本

悪い本

       図書館司書 安達 美咲
   私のオススメ
   『コミックで学ぶイライラの片づけ方』

   監修 有川真由美 絵 森下えみ
   宝島社   2012.10
 

 最近、気候が安定せず寒くなったり、暑くなったりして体調を崩している方も多いかと思いますが、そんな天候にうんざりし、些細な事でイライラすることが多くなっていませんか?また、そんな感情を抱いている自分が嫌で自己嫌悪に陥ったりはしていませんか?そういう時、イライラしても仕方がないとは分かっていてもなかなか気持ちを切り替えることが出来ず、辛いですよね。
 この本は、自分を不幸にしてしまう負の感情「イライラ」そのイライラを上手にかわし、対処する方法や「イライラ」に支配されてしまったときどうやって気持ちを切り替えるか、などのアドバイスが書かれています。例えば過去の失敗を悔やむことなく「これからどうするか」を考え、気持ちが引きずらないように前を向くことや自分の期待に相手を無理やり収めたり過度な期待をしすぎたりせず、自分と人との違いを面白がるようにすること、栄養バランスをよく取って暗い中でぐっすり眠り、朝起きたら太陽の光をあびることなど、他にもたくさんのことが書いてあります。
 こうして書くと当たり前のことばかりのようですが、当たり前のことほど人って忘れてしまいがちなものですよね。ぜひ、この本を読んで忘れてしまっている「あたりまえ」なことを思い出して、実践してみてください。

 

第72回 七夕の季節にオススメ

悪い本

       図書館司書 馬庭 佳緒里
   私のオススメ  
   『和菓子のアン』

   坂本 司著
   光文社発行    2010.410 

 東京百貨店「和菓子舗・みつ屋」で働く、梅本杏子18歳のお話。
 杏子が働くみつ屋の従業員は、仕事は完璧だが、バックヤードで株に夢中の椿店長、顔はイケメンなのにちょっと乙女な立花さん、杏子と同じアルバイトで元ヤンの桜井さんと個性豊か。
 甘い物が大好きで楽しく働く杏子のもとに、月ごとに変わる3種類の季節のお菓子に関係して、色々な事情を持ったお客様が来店します。
 七夕にちなんで7月と旧暦で祝う人のために8月に販売された季節のお菓子を買いに来たお客のエピソードとそのお菓子が印象的でした。お菓子を手に恋人に会いに行く人やこの時期に大切な人との別れを思い出す人などそれぞれのエピソードがあります。
 また、七夕のお菓子は織り姫と彦星が出会う前をイメージした「星合」、七夕に関連の深い鵲(かささぎ)を表したものなど実際に目にしたいと想像が膨むものばかりでした。
 短冊に願いごとを込める七夕ではなく、和菓子からという少し違った面から七夕について触れる機会になりました。みなさんも是非手に取ってみてください。
 

第73回 聞き上手になりたい人にオススメ

和菓子のアン
   図書館司書 北井 由香
   私のオススメ  
   『聞く力 -心をひらく35のヒント-』

   阿川 佐和子著
   文藝春秋発行 2012年1月 

 少し前に話題になった本です。
 この本は、阿川佐和子さんが著名人の方にインタビューをされた時のエピソード、そしてその体験を通して話を聞く、話を引き出すノウハウが書かれています。
 私は、面白おかしくそのエピソードを読んだり、なるほどと思って読んだりとても読みやすい本だったので1時間くらいであっという間に読んでしまいました。「相づちの極意」「なぐさめの言葉は二秒後に」「安易に『わかります』と言わない」など体験から得られた様々なノウハウは、話を聞く時に役に立ちそうです。
 しかし、私が最も面白いと思って読んだのは、まえがきです。「話を聞く」それだけのことで被災地の人の心を救うことが出来るのだと感じた話、高校生が森で働く名人のところを1人で訪ね「聞き書き」をしてレポートをまとめる「聞き書き甲子園」の話、誰もが毎日呼吸をするごとく行う「聞く」ことの面白さ。そのような様々な「聞く」話をとても面白く読みました。
 そのまえがきの中でこんな1文がありました「同じ話も新しい話しも、可笑しい話しも感動的な話も、人に話を聞くことで、自分の心をときめかせたいのです。素直な気持ちで好奇心の赴くまま人の話を聞いたとき、聞き手は自分の記憶や気持ちをそこに重ね合わせ、必ず何かを感じるはずです。そして、聞かれた側もまた、語りながら改めて自分の頭を整理して、忘れかけていた抽斗を開け、思いも寄らぬ発見をするかもしれません」(p15)
 「聞く」ノウハウだけではなく、「聞く」とは何か、そして「聞く」楽しさが発見できる1冊です。 
   

第74回 あたたかい気持ちになれる物語を読みたい人にオススメ

おすすめ
   図書館司書 安達 美咲
   私のオススメ  
   『星に願いを、月に祈りを』

   中村 航 著
   小学館 出版 2012.4 

 この物語は登場人物のアキオ、麻里、大介がホタルを見るためキャンプ場から抜け出し、蛍を見に川に向かう途中、真夜中の森の中道に迷っていたところで聞こえてきた不思議なレディオ放送DJはサトザキ・宇宙。『星空・レディオショー』を耳にしたところから始まります。
 第一章は大介の視点から書かれていますが、第二章ではアキオ視点に代わり、部活の話や放送係で一緒になった声の綺麗な里崎さんへの恋の話など、話が進むにつれアキオが成長していく姿が描かれています。
 第三章以降はいきなり10年後の話になるので、「それまでの流れが途切れた?」「どうまとめるんだろう?」と心配になったりもするかもしれませんが、最後にはそれまでの伏線や人間関係、星空放送局の意外な真実も明かされており、真実がわかった時はじんわり感動してしまう内容になっていると思います。
 願い続ければ、祈り続ければ思いは届く、と言うメッセージも込められている物語ですので、是非、手に取ってみて下さい。

第75回 オリンピック招致に盛り上がっているあなたへオススメ

オリンピックのルーツを訪ねて
   図書館司書 馬庭 佳緒里
   私のオススメ 
   『オリンピックのルーツを訪ねて―古代ギリシアの競技大祭』

   西川亮、後藤淳 著
   協同出版 2004.7 

 今年の流行語大賞の有力候補と言われているのが、「おもてなし」である。「お・も・て・な・し」とした方が良いかもしれない。
 私自身も含め、7年後の2020年東京オリンピックを楽しみにしている人も多いと思い、 少し気が早いが本書を紹介したい。
 タイトルの通り、オリンピックのルーツである古代ギリシアの競技大祭に関する遺跡や競技会の様子、種目などがたくさんの写真とともに紹介されている。
 中でも心惹かれたのは、前5世紀の競技祭で行われていた5種競技だった。5種とは、円盤投げ、槍投げ、スタディオン競走(短距離走)、幅跳び、レスリングで現在も行われている種目ばかりでとても驚いた。今回オリンピック種目に残るかどうかが注目されていたレスリング競技もこの頃から行われていて、歴史のある競技が残って良かったと思った。
 また、円盤投げや幅跳びでは、練習や試合中にフルートの伴奏とともに競技を行っていたそうだ。これは、肉体だけではなく精神も鍛えられた人を目指していたからで、現在でもスポーツマンシップが求められるし、幅跳び競技の時には観客に手拍子を求める選手がいることを思い、現代までの繋がりの深さを感じた。
 写真がたくさんあり、楽しめると思うので興味のある人は是非手に取ってもらいたい。

第76回 日本のクリスマス発祥の地が知りたい人へオススメ 

オススメ本
   図書館司書 北井 由香
   私のオススメ  
   『日本全国発祥の地事典』

   日外アソシエーツ編集・発行 2012.7  
 
 皆さん、何か調べる時にインターネット検索に頼っていませんか?頼りますよね。私も図書館にいながらついついインターネット検索に頼ってしまうことがあります。
 今やインターネットでヒットしないものはないのではないかと思うくらい情報が溢れていて紙の事典や辞書もあまり開かなくなりました。それには、ジャパンナレッジなど主な事典や辞書から一気に検索できるデータベースの普及もかなり影響しているような気がします。ただ、それらで検索できるのは、国語辞典、和英辞典、百科事典、人名事典、漢和辞典、ことわざ辞典など一般的によく利用されるものです。
 今回、私がおススメするのは全国発祥の地事典。何が調べられるかというと文字通り発祥の地を調べることが出来ます。主に明治期以降におこった産業、文化、歴史の事物起源を示す発祥の地がまとめられています。例えば、島根県で見てみると「いわがき養殖発祥の地」「ぜんざい発祥の地」「道の駅発祥の地」などがあります。何となく耳にしたことのあるものもあれば、全く知らなかったものも、そう思っていたけど実は違ったものなど様々で調べてみると、いや読んでみるととても面白い本です。
 他には、「成人式発祥の地」「オセロ発祥の地」「阿国歌舞伎発祥の地」などもありますがこれらはどこが発祥の地だと思いますか?自分の出身県は何が発祥の地としてあるかなどを見ても面白いと思います。是非調べてみて下さい。たまには紙の辞書、事典も開いてみると色々な発見がありそうです。
     

第77回 簡単にお菓子を作りたい人にオススメ 

オススメ本
   図書館司書 安達 美咲
   私のオススメ
   『ホットケーキミックスで楽々おやつ』

   神みよ子 著
   主婦と生活社 出版 2009.6 
 
 お菓子があると元気が無い時でも不思議と明るい気持ちになれますよね。そんな幸せを運んでくれるお菓子。
 しかし、いざお菓子を作ろうと思うと、ベーキングパウダーやアーモンドパウダー、その時にしか使わないであろうバニラエッセンスなど様々な材料を購入したり、粉をふるっておかなければいけなかったりと、作る工程は楽しくてもなかなか大変ですよね。
  そんなとき、簡単ですぐ作れて卵やバター、牛乳と言った家にある材料を加えて混ぜるだけでお菓子が作れるなんて最高だと思いませんか?
 この本はお菓子作りに必要な粉がすべて入っているといわれる「ホットケーキミックス」と卵やバター、牛乳を使ってクッキーやケーキなどのお菓子を簡単に作る方法が載っています。
 もちろん作り方だけでなく、「簡単なのにすごく立派」に見えるデコレーションアイディアがたっぷりと詰まっているので、友人へのプレゼントにするのもいいかもしれませんね。
 是非この本を見ながら作ってみて下さい。
  

第78回 新年のこの時期にオススメ 

オススメ本
   図書館司書 馬庭 佳緒里
   私のオススメ
   『なぜ日本人は賽銭を投げるのか―民俗信仰を読み解く』

   新谷 尚紀 著
   文藝春秋発行 2003年2月
 
 新しい年を迎えましたが、初詣しましたか?
 すでに参ったという人もまだだという人もお賽銭はどのようにしていますか?
 私は本書のタイトルを見た時ドキッとしました。神様にお供えするお賽銭を投げるなんてとても失礼な行為だと思ったからです。
 しかし、本書によると国内の色々な信仰や儀礼によっては、お金を投げても特に失礼な行為ではない場合もあるようで、例えば埼玉県大野の「送神祭」では、お神輿にお金を供えそのお神輿を村境に放り捨てることで村の厄などの良くないもの(本書では「ケガレ」)を一緒に捨て去るとされています。
 このような場合、お金が神様へのお供えという意味のほかに、「ケガレ」を吸引してくれる存在になっていると考えられるため失礼な行為にならないと考えられるようです。また、厄年の人がお金を撒く風習や綺麗な泉や噴水にお金を投げ入れたくなる心理もこの意味合いと似ているようです。
 本書は、お金だけではなく様々な民俗信仰について書かれており、なぜ玄関にお札を貼るのか、七夕は、なぜたなばたというのかなど、古くからある信仰や儀礼のちょっとした疑問が解決出来る1冊です。是非手に取ってみてください。

第79回 レポートなんて書きたくない!という人にオススメ 

オススメ本
   図書館司書 北井 由香 
   私のオススメ
   『コピペと言われないレポートの書き方教室 3つのステップ』

   山口 裕之 著
   新曜社発行 2013年7月  

  この本は、どうしたらコピペと見破られずレポートが書けるのか、なんて事が分かる本ではありません。どうすれば「コピペ」と言われなくなるのかが分かり やすく、けれど、丁寧に解説されています。所謂よくある「レポートの書き方」とは、少し違って面白く読めます。著者が1時間で読めると言っていますが、そ の通り1時間もかからず読めました。
 「その情報がどこからのものかをはっきりさせなさい」よく聞くセリフです。実際に私自身もよく使っています。では、どうしたらはっきりさせることが出来るの?簡単です。まずは、誰がそう言っているのかを述べる練習からです。
  例えば「コピペとは、コピー・アンド・ペーストの略。コンピューターのデータ編集作業で文字や図形などのデータの一部を複写し、他の部分へ貼り付けるこ と」とだけするのでは、なく「大辞林 第三版によると、コピペとは、コピー・アンド・ペーストの略。コンピューターのデータ編集作業で…」とすればいいのです。(実際、レポートに書く時の形式 は、違ってきますが)自分のレポートを見てどうですか?全部「○○によると…」が付くようなことになったりしていませんか?
 このような本当に基本的なことからレポートのチェック項目一覧としてレポートを書いた後にチェック出来るリストも付いています。
 私は、この本を読んで1つ、はっとさせられたことがあります。「なぜ、学生はコピペをするのか」ということです。なぜするのかが分かれば、どうすればしなくなるのかが分かるかもしれません。私もこれを読んで少し考えさせられました。
 さあ、皆さん、「最重要ポイント」(著者曰く、大学教員が最低限ここだけはちゃんとして欲しいと考える点だそう)を押さえてレポートを書いてみましょう。
 ちなみに図書館では、情報検索の仕方、その情報の活用方法、レポートでの活用方法のレファレンスにも対応しています。困ったことがあれば聞きに来て下さい。

第80回 植物に興味がある人にオススメ

オススメ本
   図書館司書 安達 美咲
   私のオススメ
   『植物図鑑』

   有川 浩 著
   角川書店 出版 2009年6月
 
  皆さんは「野草」や「山菜」ってどれぐらいの種類を知っていますか?
  つくしやふきのとうなどを知っている人は多いかもしれませんが、それ以外の野草ってあまり知りませんよね?庭掃除の際に雑草と間違えて棄てている人も多いのではないかと思います。
 今回紹介させて頂く「植物図鑑」という物語は、行き倒れの男イツキを主人公のさやかが拾うところから始まります。「植物図鑑」というタイトルなのに行き倒れの若い男性を拾うという冒頭って一体どんな話?植物とどんな関係があるの?と思うかもしれませんが、実はこの行き倒れていた男イツキがかなりの植物オタクで、さやかに家政婦兼居候と言う形で拾われてからはその知識を活用して道端に咲いている四季折々の野の花や山菜を収穫し、それらを使って普段コンビニ弁当ばかり食べていたさやかに山菜料理をふるまったり、野草にまつわる雑学を教えたりしているうちにそれまで野草をほとんど知らなかったさやかが野草の魅力に目覚めていくと同時にイツキにも惹かれて行く・・・という物語になっています。
  2人が恋人同士になり、休日に「道草狩り」に行って一緒に料理する場面なども細かく描かれているので、甘い恋愛小説を読みたい人にもお勧めできる図書だと思います。ぜひ、手に取って読んでみて下さい。