バックナンバー 第61回~第70回

第61回 素敵な夏休みを過ごしたい人にオススメ

悪い本

  図書館司書 馬庭 佳緒里
  私のオススメ
   『夏の庭 The friends』

   湯本 香樹実著
   新潮文庫刊 2001年5月
 

 みなさんは、この夏をどのように過ごしますか?
 夏というと、海に行ったり、花火大会に行ったりと楽しみのたくさんある季節で、みなさんそれぞれに様々な夏休みの思い出があるではないでしょうか。
 この物語は、小学校6年生の木山、河辺、山下の3人の男の子と、1人のおじいさんとのひと夏の交流を描いた作品です。
 彼ら3人は、小学6年生の夏休みに「死んだ人がみてみたい」という理由から1人暮らしのおじいさんの見張りを始めます。
 私はこの物語を読み始めた時、3人の身勝手な行動と、家の周りをウロウロしている3人に対するおじいさんの怖そうな様子に、読むのを止めようかと思いました。
 しかし、おじいさんが3人に向かってVサインをしたところから目が離せなくなりました。この出来事によって4人の距離が徐々に近づき、おじいさんは実は優しい人で3人に様々
なことを教えてあげます。始めは、スイカも切れなかった3人も、おじいさんに出会ったことで大きく成長していき、いきいきとして夏を過ごしていきます。

 私の想像する「夏の庭」は、ひまわりが咲いているような庭でしたが、小学生の男の子3人とおじいさんが過ごすこの「夏の庭」もなかなか素敵な庭です。
 この作品を読むと、人との出会いはとても大切なものだと改めて感じさせてくれます。また、ひと夏という短い期間でも、様々な経験が出来たり、成長出来たりするのだと感じることが出来ます。夏休みに何か始めようとするきっかけになるような作品です。
 

第62回 芸術の秋を感じたい人にオススメ

画談
   図書館司書 北井 由香
   私のオススメ  
   『画談 -日本画家のことばと作品-』

   足立美術館学芸部編
   足立美術館発行 2009年10月
 
 画家の言葉は、その人柄や作品や芸術に対する考え方などを理解する上で重要な手がかりになると書かれています。絵を見ただけでは知ることのできないその絵に対する特別な思いや信念、理想などが表現されていることがあるとも書かれています。
 読んでみると、短い言葉の中にその人の画家観と言うよりも人生観が集約されているのを感じます。この本にある安田靫彦の言葉です。「芸術は人格の表現である、幾多の伝記よりも一個の遺作が能く其の全人格を表白する。」これらの言葉を読んでいくと、画家たちが絵を描くことでどれだけ自分と向き合ってきたのかがよく分かります。芸術作品は、自分を表現するものだとよく言われますが、その本当の意味が分かったような気がします。
 そして、実は生きて生活をすることも常に自分を表現していることなのではないでしょうか。自分では、出していないつもりでも。この本を読んでから絵を観るとまた違った思いで絵を観ることが出来そうな気がします。逆にこの人の絵を観てみたいとも思いました。
 そして何よりも立ち止まって自分を振り返る時間にもなりました。

第63回 いつもとは違う読書を楽しみたい人にオススメ

しかけのあるブックデザイン
   図書館司書 山岡 麻衣
   私のオススメ  
   『しかけのあるブックデザイン』

   グラフィック社編集部編
   グラフィック社発行 2007年7月
 
 皆さんは本を選ぶとき、どの点に注目して選びますか?著者や本の内容、表紙のデザインなど、選ぶポイントは人によってさまざまだと思います。その中から今回は、様々な工夫を凝らしたブックデザインに注目し書かれている本を紹介したいと思います。
 本書は、見た目のデザインはもちろん、読んでいる最中や読んだ後にもその書籍を楽しめるブックデザインについて、本のあらすじや写真などを、デザイナーや担当編集者の話とともに紹介しています。
 表紙のデザインはもちろん、文章の配置の工夫や、使用する紙の違いなど、本の写真と紹介文とを照らし合わせながら読むことで、デザイナーのその本に対する思い、読者をどう喜ばせようかと言う気持ちがひしひしと伝わってきます。
 例えば、カバーに透ける紙を使用し、表紙に描かれた絵がぼんやりと怪しく見えるように工夫された本や、本の小口が赤色で染められている本、スピン(しおり)が驚くほど長い本など、本の内容・手がけるデザイナーにより、そのしかけは個性豊かでデザインもさまざまです。
 書店や図書館で本を探すとき、内容や著者だけではなく、実際に手に取りそこに施されたブックデザインにも目を向けてみることで新たな発見があるかもしれません。
 また、本当に水でタイトル文字が滲んでいるかと思わせるようなカバーデザインの「失はれる物語」や、蛇腹構造の絵本「魚がすいすい」のように、本書で紹介されている本の中には、松江キャンパス図書館にも所蔵されているものがいくつかあります。ぜひ一度手に取って実際にそのデザインに触れてみてください。

第64回 紅葉を楽しみたい人にオススメ

葉っぱのフレディ
   図書館司書 馬庭 佳緒里
   私のオススメ  
   『葉っぱのフレディ―いのちの旅―』

   レオ・バスカーリア作
   みらいなな訳
   童話屋発行 1998年10月
 

 私はいつもこの季節に「葉っぱのフレディ」のことを思い出してしまいます。
 特に黄色い葉っぱを見かけると、この本の表紙を思い浮かべずにはいられません。
 この絵本と出会ったのは、小学生の時に読み聞かせをしてもらったのが最初でした。私は「葉っぱのフレディ」に出会うまで、紅葉はとてもきれいで、踏んで歩くと音が鳴って楽しいというような印象しか持っていなかったように思います。
 しかし、この絵本に出会ってからは、単純にきれいだという印象だけではなく、子どもながらに紅葉のやがて散るから美しいという感じやはかない魅力について少しですが感じるようになりました。
 また、この絵本は「いのち」について考えさせてくれます。作者のレオ・バスカーリア氏が哲学者ということもあり、フレディの一生を通してとても自然に生きるとは何か、死とは何かについて考えるきっかけを与えてくれます。秋が訪れて、葉がいっせいに紅葉した場面では、美しさを感じるのと同時にフレディのこの先のことを思うと寂しさやはかなさを感じてしまいます。そのため絵本ですが大人も楽しめて、何度読んでも魅力的な作品です。
 この季節にぴったりの作品ですので、是非手に取ってみてください。

  

第65回 寒い日に心が温まる1冊

クラウディア 奇蹟の愛
   図書館司書 北井 由香
   私のオススメ  
   『クラウディア 奇蹟の愛』

   村尾 靖子著
   海拓舎発行 2003年11月
 

  この本は、おススメの本と言うより私の好きな作品の1つで、戦争によって突然に引き裂かれた夫婦、弥三郎と久子が再会するまで、そしてそれまでの間37年間、弥三郎をロシアで支え続けたクラウディアの事実を描いた作品です。
 私がこの本をおススメするのは、実は2度目。何年か前に初めてこの本を紹介したのは、図書館に毎日来る1人の男子学生。読み終えた後、感想を聞くと「よく分からなかった」という答えが返って来て、少しがっかりしたのを覚えています。よく分からなかった理由を聞くと、なぜクラウディアが37年もの間支え続け尽くして来た弥三郎と自ら別れ、日本の家族の元に返す決断をしたのかその気持ちが分からなかったと。大切な人だからこそ別れるという想いが彼には理解できなかったようです。
  私は、そんなクラウディアの大切な人の幸せを願う姿が苦しくなるくらい切なくて、そして尊く思います。大切な人の幸せを願うことができる人でありたい、そんな生き方がしたいと思わせてくれる私にとって心が温かくなる1冊です。

  

第66回 新しい事にチャレンジしたい人にオススメ

消しゴムはんこ。歳時記も。
   図書館司書 山岡 麻衣
   私のオススメ  
   『消しゴムはんこ。歳時記も。』

   津久井 智子著
   大和書房発行 2007年12月
 
 皆さんは消しゴムはんこを知っていますか?
 消しゴムはんことは、消しゴムにカッターナイフや彫刻刀を使って好きな絵柄を彫り、スタンプの様にしたものです。
  本書は、消しゴムはんこの職人で、オーダーメイドの消しゴムはんこ屋を営む津久井智子さんが、日本の歳時記とともに季節に関する絵柄の消しゴムはんこを紹介している本です。
 例えば1月。「睦月」と彫られたはんこの絵柄を中心に、大根やしめ縄、南天と言った1月に関わりのあるもののデザインが並んでいます。
 やわらかい絵柄とともに説明文も載っていて、例えば南天は、「難を転じる」ことから縁起の良い植物として新年の寄せ植えの定番になっていることなど、普段自然と目にしていたものの意味を発見することが出来ます。
 1年の季節の事柄の他に、消しゴムはんこを使った雑貨の作り方や手ぬぐいの活用方法も紹介されていて、日本の古き良きものを生活に取り入れる楽しみも発見することが出来ます。
 最後の章では、消しゴムはんこの彫り方のコツも載っていますので、新しい年の始まりに、日本古来の四季折々の言葉を楽しみながら、消しゴムはんこの魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

  

第67回 季節を感じたい人にオススメ

季(百年文庫)
   図書館司書 馬庭 佳緒里
   私のオススメ  
   『季(百年文庫10)』

   円地文子、島村利正、井上靖著
   ポプラ社発行 2010年10月
 

  立春を過ぎても雪が舞うような寒い日があり、春が待ち遠しい季節だと思います。
 今回は様々な季節が感じられる「百年文庫」第10巻の『季』を紹介します。
 本書には円地文子の『白梅の女』、島村利正の『仙酔島』、井上靖の『玉碗記』の3作品が収録されています。少し古い作品ですが短編で読みやすく、その時代の物事の考え方や独特の言葉遣いに触れることが出来る楽しい作品です。
 3作品とも季節がテーマになっていることもあり、花や山々の色、雨の様子などの表現から移ろう季節の美しさを感じさせてくれます。
 中でも私が1番好きなのは『玉碗記』です。考古学者の友人からの誘いで、千何百年も前の一対の硝子器(玉碗)を見るため旅に出る話です。
 その硝子器とは、安閑天皇とその妃に1つずつ献上された一対の硝子器なのですが、2つはどのような理由からか、別々の運命を辿ることになります。
 しかし、千何百年の時を経て運命的に2つの硝子器がまた一対となって一緒に並べられ時が訪れます。その場面がとても印象的で、運命的な時の流れが感じられ私はとても好きです。
 季節の移ろい、時の流れが感じられるこの1冊をオススメします。

第68回 卒業する皆さんにオススメ

季(百年文庫)
   図書館司書 北井 由香
   私のオススメ  
   『この気もち つたえたい』

   伊藤 守著
   ディスカヴァートゥエンティワン発行 1992年5月
 

  皆さんは、コミュニケーションって何だと思いますか?相手と会話がスムーズにすすめられること、相手の話をよく聞いてあげられること、自分の気持ちを上手に伝えられること、情報を共有することなどなど、コミュニケーションの概念は、色々考えられます。また家族、友達、職場の人など相手によってもその意味合いは違ってくると思います。
   しかし、いずれにしてもコミュニケーションは難しいものです。どんなに親しい間柄であっても上手く出来ないこともあります。
 この本は、自分の気持ちを上手く伝える方法とか、こうすればコミュニケーションが上手く出来るようになるとか、そのテクニックについて書かれたものではありません。ただコミュニケーションには、何が大切で何が必要なのかがよく分かると思います。
 私は、この本を読むまでは、何となくできているような気がしていましたが、そうではなかったことに気付かされました。普段このような本を読むことはめったにないのですが、この本だけは何度も読み返しています。読んで反省していると言った方が正しいのかもしれません。
 卒業生の皆さんは、これからそれぞれ様々な途に進んで行かれることでしょう。そして、その中で様々な人と出会うことになると思います。時には、うまく行かないこともあるでしょう。そんな時にこの本を思い出して読んでみて下さい。この本が自分を見つめ直すきっかけに、そして問題解決の糸口になればと思いオススメします。

  

第69回 出会いの時期にオススメ

本からはじめる物語
   図書館司書 馬庭 佳緒里
   私のオススメ  
   『本からはじまる物語』

   阿刀田 高ほか著
   メディアパル発行 2007年12月
 

  本書は、18名の作家が「本」や「本屋」を舞台に描いた作品が収録されているアンソロジーです。著者は、阿刀田高、有栖川有栖、いしいしんじ、石田衣良、市川拓司、今江祥智、内海隆一郎、恩田陸、篠田節子、柴崎友香、朱川湊人、大道祷貴、梨木香歩、二階堂黎人、本多孝好、三崎亜紀、山崎洋子、山本一力の18名です。
 私が特に心に残った作品は、本田孝好の『十一月の約束』と今江祥智の『招き猫異譚』です。
 『十一月の約束』は、中学生の時に本屋である男性と出会ったことがきっかけで、本を読むようになり、登校拒否を止めて学校へ通うようになった男性の物語。
 『招き猫異譚』は、自分好みの本が揃っているお気に入りの本屋を見つけた主人公と、主人公の好みに大当たりの本をみつくろってくれる店主、そしその店の猫の物語。
 どちらもちょっとした出会いがきっかけで、本を好きになったり、本屋へ通うようになったりします。私自身、ちょっとしたきっかけで読んだ本が、実はとても面白かったという経験が今までにあります。
 4月は出会いの時期で、新しい人との出会いもあると思いますが、ちょっと図書館に立ち寄ってみて、気になった本を手に取ってみませんか?この物語に書かれているような、本との素敵な出会いが待っているかもしれません。そんな気持ちにさせてくれる作品です。

第70回 本を贈りたい人にオススメ

ダ・ヴィンチ No.228 特集「本を贈る」 
   図書館司書 北井 由香
   私のオススメ  
   『ダ・ヴィンチ No.228 特集「本を贈る」』

   メディアファクトリー発行 2013年4月
 
  毎年、私の誕生日に県外に住む友達が誕生日プレゼントを送ってくれるのですが、プレゼント本と一緒に必ず入っているものが本。私の好きそうなイラストが入っている本だったり、雑誌だったり、敢えて私が買わないような本を選んでくれたりと毎年色々な本が送られてきます。
 そして、私もその子の誕生日には、プレゼントと一緒に一冊本を贈るようにしています。でも、本をプレゼントするのって意外に難しいんです。自分が気に入っていても相手が気に入ってくれるのかどうなのかも分からないし、相手の好きそうな本だともう持っているかもしれないとか思うと結構悩みます。
 今回、この「ダ・ヴィンチ」では、「本を贈る」をテーマに様々な視点から本を贈ることについて書かれています。本を気軽に楽しく渡すコツだったり、本を贈る際のアイディア、様々な場で活躍している人たちが贈りたい本なども紹介されています。
例えば特定の誰かに「タイで暮らす姉へ」「91歳のおばあちゃんへ」あるいは、不特定の誰かに「毎日何もせずゴロゴロ寝て暮したいと思っている人へ」「自 分てなんだろう?と悩んでいる人へ」そこに書かれている本を贈る理由、どんなときに本を贈りたくなるのかも読むととても面白いと思います。
   この本を読んで本を贈るってやっぱり難しい、けれどそれを楽しめる方法を知りました。是非読んでみて下さい。本を贈るというのは、本当に奥が深いのです。 私は、本を贈る際のアイディアを今後の参考にさせてもらおうと思います。贈るのが楽しみになってきました。誰かに本を贈りたくなる1冊です。