バックナンバー 第41回~第50回

第41回 『世界を救うショッピングガイド』

世界を救うショッピングガイド
  図書館司書 山岡 麻衣

  私のオススメ
   『世界を救うショッピングガイド』
   野村尚克 著 
   タイトル株式会社 発行 2009年
 
 皆さんは、コーズブランドというものを知っていますか?
私自身、本書に出会うまでこの言葉の意味を知りませんでした。 コーズブランドとは、消費者が商品を購入することにより、その売上の一部が社会問題を抱えている国へ寄付されるなど、社会問題の解決を支援できる商品やサービスの事を指します。
単語や意味のみを聞くと、私たちの普段の生活からは少し遠いもののように感じますが、本書に紹介されているブランド名や商品を見た時、コーズブランドをより身近に感じると思います。
本書にはコーズブランドの活動・支援内容が、ブランド名や商品の写真とともに紹介されており、衣類・ラグジュアリアイテム・コスメティック・食べ物・日用品というように、カテゴリー分けしてあるのでとても読みやすいです。
また、商品の説明とともに、その商品がどのような社会問題を支援しているのかを、6つのタイプに分けて示してあります。
私たちの普段の生活ではあまり気づかないかもしれませんが、世界には貧困、教育、福祉など様々な社会問題を抱えている国が沢山あります。それらの問題を解決するための大きな活動はなかなかできないかも知れません。
 しかし、普段の買い物をほんの少し意識を変えて行うだけで、私たちにも困っている人たちを手助けできるようになるのです。
購入金額のほんの一部というのは、小さなものかも知れませんがそれらを沢山の人たちが積み重ねていけば、大きな手助けになると私は思います。
本書には、私たちがそれだと知らないだけで、とても身近なものがコーズブランド商品である事を教えてくれます。コーズブランドに関するコラムも載っていますので、皆さんもこの本を読んで普段の買い物から、社会貢献を始めてみませんか?

第42回 『自然体自分のサッカーを貫けば、道は開ける』

自然体自分のサッカーを貫けば、道は開ける
  図書館司書 馬庭 佳緒里

  私のオススメ
   『自然体自分のサッカーを貫けば、道は開ける』
   遠藤 保仁 著 
   株式会社小学館 発行 2009年
 
 2010年はバンクーバーで冬季オリンピック、南アフリカではサッカーワールドカップが開催されたことから、私自身スポーツに触れる機会が多い1年でした。そんな経験から、サッカーに詳しくない私ですが、ワールドカップで日本代表として活躍した遠藤保仁選手の著作である本書を読みました。
 本書を読み私が驚いたのは、遠藤選手の「パスは失敗して当たり前」と思ってプレーしているという言葉でした。「失敗して当たり前」という気持ちを持っていると、弱気な感じがして失敗してしまいそうだと私は思うのですが、遠藤選手は逆にこのように思うことによって、緊張しすぎることなく、失敗を恐れない思い切ったプレーが出来ると言っています。
また、ミスをした時にもこのように気持ちを持っていれば、落ち込みすぎることなく、次のプレーや試合に臨めるのだそうです。確かに緊張しすぎないこと、気持ちに余裕を持つことは大切だと思いますが、自分の思うように気持ちをコントロールすることは難しいので、それが出来るというのはさすがプロの選手だなと思いました。
また、終章の「南アフリカW杯への挑戦」という全5ページの内容も印象に残りました。南アフリカワールドカップが開幕する前、日本代表や岡田武史監督に対して厳しい言葉がありました。
 しかし、ワールドカップでは素晴らしい結果を残すことになり、一気に称賛の声となりました。遠藤選手はワールドカップ前に出版された本書で、「南アフリカで結果を出せば、『岡ちゃん、やった』となるはずだ」「俺は、岡田・日本代表はその力を十分持っていると信じている」と書いています。この言葉、そして日本代表が残した結果から、改めて、物事に取り組む時の気持ち、自分を信じる気持ちの大切さを感じました。

第43回 『トラッドジャパンのこころ英語と日本語を旅する』

トラッドジャパンのこころ英語と日本語の世界を旅する
  図書館司書 北井 由香

  私のオススメ
   『トラッドジャパンのこころ英語と日本語の世界を旅する』
   江口 裕之,長野 真一著
   日本放送出版協会 発行 2010年
 
 日本の美意識の1つである「わび・さび」を英語で伝える時、何と訳し、どう伝えればうまく伝わるのだろうか?
 このような概念は、日本独特のものであり、一言で言い表すことのできる英単語はない。本書にある「宗教や芸術から日常生活の表現に至るまで、違う歴史をたどり、異なる文化を育んできたからこそ言葉にも違いが出てくる」の言葉通り、言葉の違いは、単にそれの違いではなく、その背景にある文化や価値観の違いだと気付かされる。
 そして、その国の言葉を話すということは、その国の人の価値観や考え方を知ることにつながるのだということも。
 英語力を高めるだけでは、伝えることができないトラッドジャパン。日本を知り、日本についてどう思うかを考えていないと伝わらない。英語で表現しようとすることで日本文化を再発見できる、そこが日本文化を伝える面白さでもあると思う。
 日本の文化を英語で表現できるのか、できないのか、よりも「言葉」を通して歴史や文化を考えるということに論点をおいた本。読みやすく1日で読めるので是非読んでみて欲しい。そして、日本の文化を英語で世界に伝えよう。

第44回 『不思議の扉 時をかける恋』

不思議の扉
  図書館司書 山岡 麻衣
  私のオススメ
   『不思議の扉 時をかける恋』

   乙一,恩田 陸,梶尾 真治,ジャック・フィニイ,貴子 潤一郎,太宰 治著 
   大森 望編
   角川書店 発行 2010年
 
 読んだ事の無い作家に出会いたい時、私は必ず短編集やアンソロジーを読むようにしています。アンソロジーとは、テーマに合わせて複数の作家の作品を集めた物のことを言います。1冊の本で知らない作家と一度にたくさん出会えるこの形は、短篇好きな私にはとても合っているような気がします。
たくさんあるアンソロジー本の中で、私が今回紹介したいのは、『時間』をテーマに選ばれた短篇ラブストーリー集『不思議の扉 時をかける恋』です。
収録作家は、梶尾真治、恩田陸、乙一、貴子潤一郎、太宰治、ジャック・フィニイの6人で、それぞれの短篇を1作品ずつ収録しています。
タイムカプセルに入ったために時間をずらされてしまった恋人の話、違う時間(時代)に生きる相手と恋に落ちてしまった話、時代と場所を越えて何度も出会う恋人の話...。
作者によって『時をかける恋』の物語はさまざまな展開を見せてくれます。時間の壁が間にあるからか、ほとんどの作品には切ない雰囲気が漂っていますが、その切なさの表現、余韻の残し方も作家によって違ってきます。その発見を手掛かりにして、自分がもっと読んでみたい作家を見つけてみるのも良いかもしれません。
図書館には今回紹介した本以外にもさまざまなアンソロジー本があります。今まで読んだ事のないジャンルや作家に出会うきっかけとして、また、一つのテーマに沿った作品をとことん読んでみたい人にもアンソロジー小説はおすすめです。ぜひ読んでみてください。

第45回 『地団駄は島根で踏め-行って・見て・触れる《語源の旅》』

トラッドジャパンのこころ英語と日本語の世界を旅する
  図書館司書 馬庭 佳緒里
  私のオススメ
   『地団駄は島根で踏め-行って・見て・触れる《語源の旅》』

   わぐりたかし著
   光文社 発行 2009年
 
 本書は、語源ハンターである著者が、「語源遺産の旅」という言葉の語源にゆかりのある地域や場所を訪ねた旅について書かれた本です。本書によると、言葉の語源が特定の土地と結びついていると確認出来ている場所は、国内に147か所あるそうです。その中から、滋賀県にある「急がば回れ」の語源や、神奈川県の「ごたごた」の語源など23の語源が紹介されています。
 そして、島根県の語源として紹介されているのが「地団駄」です。私はタイトルを見て、島根県には人を怒らせて「地団駄」を踏ませてしまうような場所があるのだろうか、それとも島根県で「地団駄」を踏んだとしても怒りを鎮めてくれるような場所があるため、『地団駄は島根で踏め』ということだろうかといろいろな想像し、本書を読みました。
 読んだ結果、私の予想はどちらもはずれました。予想ははずれましたが、「地団駄」の語源が島根県の古い伝統文化から生まれたものであることを知り、「地団駄」という言葉がちょっと好きになった気がします。そして、知らないうちに語源となった「地団駄」を本書の著者と同じ様に私は踏んだ経験があったので、少し嬉しい気持ちにもなりました。
 「地団駄」の語源については、是非本書を読んでみてください。そして、是非島根県で「地団駄」を踏んでみてください。

 

第46回 『江戸時代の図書流通』

江戸時代の図書流通
  図書館司書 北井 由香
  私のオススメ
   『江戸時代の図書流通』

   長友千代治著
   思文閣出版 2002年
 
江戸時代には、京・大阪・江戸を中心に出版文化が発達することにより、書物が商品として流通する。流通するということは、それを商売にする本屋ができ、読者が増える。
 読者が増えることで、そのニーズに応えようと様々な種の書物ができる。また、それを売ろうと出版広告もでき始める。この本を読むと、どのように書物が流通していったのか、読者は、どこでそれを入手し、どのように読んだのかを詳しく知ることができる。
 もちろん、このように図書が流通するには、教育が普及していること、相応の都市の発達が必要になるだろう。そういった部分も読み取れて時代の背景も想像できる。私がこの本を読んで図書の流通について知ることができたのは、もちろんのことだが、現在に比べて人々にとって書物が特別なものであったように感じた。
 江戸時代に出版された本を読む機会は、ほとんどないのだが、この機会に人々がどんな本をよく読みどんな本に夢中になったのか、生活に役立てたのかなどを知るのも面白そうだと思った。
 図書の流通だけでなく、人々の暮らしぶりも見えてくる1冊である。

 

第47回 『老子、荘子の名言』

老子、荘子の名言
  図書館司書 山岡 麻衣
  私のオススメ
   『老子、荘子の名言』

   谷郁雄文、高橋真澄写真
   ピエ・ブックス 2010年
 
本書は『老荘思想の研究者ではなく、「老子」「荘子」という書物を熱心に読んだことすらない人間』である著者が、老子と荘子の言葉に触れ感じた事を著者の言葉で綴った本です。
 『life 生き方』『myself 自分』『mind 心』『human 人』『knowledge 知』『world 世』の6つの章にそれぞれ関係する、老子、荘子の名言を載せ、その一つ一つに著者の考えや解釈の言葉が添えられています。
 章は6つに分かれていますが、それぞれ「生き方」「人生」についてのヒントになる名言が載っています。
 哲学というと少し堅いイメージを抱く人がいるかもしれません。私自身、哲学は授業で習うもの、理解には深い知識が必要なもの、というような、少しとっつきにくい印象を持っていました。
 しかし、本書を読んでみて、哲学・思想というものは、知ること、学ぶことにより、自分自身の人生をより生きやすくするためのヒントを見つけられるものではないかと感じました。
 言葉を知り、解釈を学び、自分の中で咀嚼する。私のような哲学初心者には難しい言葉も沢山出てきましたが、著者の言葉や例えがとても分かりやすく、イメージし易いものでしたので、今まで老子、荘子に触れて来なかった人にも読みやすいものだと思います。
 また、一つ一つの言葉に、写真家・高橋真澄氏の写真が見開きで載っていますので、写真を眺めながら老子、荘子の名言について考えてみるのも良いかも知れません。
 沢山ある明言の中で私が特に心に残ったのは、「似木鶏矣(ぼくけいににたり)」(荘子)と「魚相忘乎江湖(うおはこうこにあいわする)」(荘子)です。
 本書にある老子、荘子、そして著者の言葉に触れ、自分自身のお気に入りの名言を見つけてみてください。

 

第48回 『希望のニート』

希望のニート
  図書館司書 北井 由香
  私のオススメ
   『希望のニート』

   二神能基 著
   東洋経済新報社 2005年

 日本で「二ート」と言えば15歳から34歳までで、学校卒業後に職探しも通学もしない未婚の若者のことである。
 この本を読むと二ートでも二ートでなくても気持ちが楽になると思う。人生や仕事に目標や目的を頑張って持つ必要はないのだと。
 大学に入るまで、好きなことよりも受験勉強を優先してきたのに大学を卒業して、就職をする時になって「自分の好きな道を歩きなさい」「自分の好きなことをしないさい」と言われる。
 突然そんなことを言われても「好きな仕事が見つからない」「やりたいことがない」「何がしたいのか分からない」逆にその言葉がプレッシャーになり、考えることに疲れる。いわゆる「自分探し」への疲労感だそうだ。
 確かに仕事にやりがいがないといけないような気がしている。人生に目標がないといけないような気がしている。もし、それらを見つけられなかったら?
 引きこもりや二ートは、けっして特別な若者たちの問題ではないと言う。誰にでもなりうると。そしてこうも言う、頑張って目標を持つ必要もないし、無理にやりがいを探さなくてもいいと。
 就職が決まらず、したいことも分からず、自分さえ見失いそうになってあせった時、是非この本を読んで欲しい。きっと少しはラクになるハズだ。
 最後に紹介したい。こんなエピソードが本書の中にあった。著者は、自身の講演会の最後に子どものことで悩んでおられる親御さんにこのような話をされるそうだ。「今日はこのままご自宅に戻られて、親子で今後の対策を話し合うなんてことは絶対にしないで下さい。できれば、このあとは、ご夫婦だけでレストランにでも行かれて、その後は、カラオケでも行ってストレスを解消されてからご帰宅下さい」と。すると大半の親御さんが深くうなずかれ「では早速、レストランとカラオケに行って来ます!!」と真面目な表情で言われるそうだ。笑えるような、笑えないようなエピソードである。

 

第49回 『アホウドリの糞でできた国』

アホウドリの糞でできた国
  図書館司書 馬庭 佳緒里
  私のオススメ
   『アホウドリの糞できた国』

   吉田 靖 著
   アスペクト 2005年

 太平洋の赤道付近に位置する、世界で3番目に小さな国、ナウル共和国。
 私はこの作品を読むまで、ナウル共和国のことをよく知りませんでした。しかし、ちょっと笑えるナウル共和国の歴史を知って、すぐにこの国のことが好きになりました。
 ナウル共和国は、アホウドリの糞から出来る「燐鉱石(りんこうせき)」という鉱石が豊富にある国です。この鉱石を輸出することで莫大な利益を得て、「世界で最も豊かな国」と呼ばれる国になりました。
 しかし、そのうちに燐鉱石の量が減っていき、ナウル共和国の財政が苦しくなっていきます。そこで、政府が様々な対策を取るのですが、政治や経済に詳しくない私でも分かるようなお粗末なものでちょっと笑ってしまいます。
 そして、ついに財政の悪化が深刻化し、唯一の入国手段であった空港の営業が停止し、ナウル共和国は世界から孤立してしまいました。これだけでも大事件ですが、ナウル共和国はまだまだ世界を驚かせます。突然、ナウル共和国への電話やインターネットが通じなくなってしまい、国がまるごと行方不明になりました。そんなことがあるの!と笑ってしまいましたが、本当にあったのだから驚きです。
 そんなナウル共和国も、現在は外国の支援を受けながら、財政再建に向けて動いているとあり、最初は様々な事件に呆れ、笑っていた私も、徐々にナウル共和国を応援するようになっていたため、ほっと安心をしました。
 しかし、本書の最後には今後のナウル共和国にとって、笑うことの出来ない、そして私たちにも知らん顔は出来ない、危機について述べられています。それは、地球温暖化の進行によってナウル共和国が海に沈んでしまうというものです。
 本書は、ちょっと笑えるけれど、最後にいろいろなことを教えてくれ、考えさせてくれる作品です。

 

第50回 『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!鳥取環境大学の森の人間動物行動学』


先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!鳥取環境大学の森の人間動物行動学
  図書館司書 山岡 麻衣
  私のオススメ
   『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!鳥取環境大学の森の人間動物行動学』

   小林 朋道 著
   築地書館 2007年

 動物に関する本を探していた際、まずこの本のタイトルがグッと私の心を掴みました。
 巨大コウモリが廊下を飛んでいるというのはどういう事か。好奇心をくすぐるタイトルの下に「鳥取環境大学」の文字を見つけ親近感が沸きました。
 本書は、鳥取環境大学教授である小林朋道教授が、自身と学生、そして野生生物(一部家畜)をめぐる様々な事件を書き記したものです。
 鳥取環境大学の周辺には森や河川、池などがあり「キジがキャンパスを歩いたり、カルガモが緑化された屋上に巣をつくったり、タヌキが学内の道路を横切ったりする」自然や動物ととても距離の近い大学です。
 タイトルにあった、「巨大コウモリ!廊下に出現事件」は、夜の大学の廊下で学生が巨大コウモリを発見した事が始まりでした。学生と共に著者が目を輝かせながら捕獲したコウモリは、なんと鳥取県では捕獲報告がなく、日本でもこれまで捕獲例が10例ほどしかない珍しいものでした。この事件の章では、コウモリの捕獲の様子と共にコウモリの行動の特徴や体の構造などが分かりやすく説明されています。
 また、本書に書かれているそれぞれの事件には、度々「人間の脳の癖」というものの説明が出てきます。「自然界で、ある出来事が起こると、その出来事に関連した事象に対する脳の反応性が増大する」というもので、著者が生物に関する事件に遭遇しやすいのもこれが関連していると言います。巨大コウモリを大学林に放した翌日、別の種類のコウモリの営巣洞窟を発見したのも、この「脳の癖」が関係しており、前日に巨大コウモリと遭遇し捕獲した著者の脳は、コウモリに関連する事に敏感になり、普段なら見過ごすような洞窟にも反応できたということのようです。
 このように本書では、学生や著者が遭遇した生物の事件を楽しみながら、人間の「脳の癖」や動物たちの習性について知ることができます。
 コウモリの他にも、研究室で飼っていた蛇とハムスターが同時に逃げ出し、ハムスターが蛇に飲み込まれないよう奔走した事件や、無人島で一人ぼっちで暮らす野生の雌ジカを発見した事件など、様々な珍事件が書き記されています。
 動物達の愛くるしい姿が、著者の分かりやすい文章で書かれているので、エッセイを読むような感覚で読み進められます。