バックナンバー 第81回~第90回

第81回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本 
  図書館 学生アルバイト 村上 翔太

  私のオススメ
   『二番目の悪者』

   林木林作、庄野ナホコ絵
   小さい書房出版  2014年 

  新卒採用担当「新卒の方の新人研修のプログラムにも加えたいような内容ですね。」
今回紹介するのは小学校高学年向けの絵本です。 いきなりですが、皆さんは絵本を子どもが読むものだと思っていませんか?
  私は、大学生となった私たちや大人にこそ絵本を読んでほしいと思っています。簡単な理由は2つ。①短時間で手軽に読める。②それでいて日頃の生活などを改めて考えさせられるからです。
  そして、今回はこの話をするにぴったりの絵本をご用意しました。それが、『二番目の悪者』です。
  この絵本のキーワードは「タイトル」です。このことを念頭に絵本を読むと、かなり深い内容であると気付かされます。
  では、絵本のあらすじを冒頭のみ紹介しましょう。
 主人公は「金のたてがみのライオン」。非常に自分に自信を持っている傲慢なライオンです。このライオンが住む国で、新しい国王を決めることになりました。金のライオンは、自分こそが王様にふさわしいと考え、王に立候補します。そんな金のライオンのライバルとなるのが、人柄の良さが良いことで知られている、「銀のたてがみのライオン」です。金のライオンは、銀のライオンを蹴落とすために「あること」をしますが、果たしてどうなるのでしょうか...?
 この絵本の物語について、私は新卒の採用面接で実際に話しました。 「我々採用担当に、あなた自身が好きなものの魅力を、分かるように伝えてください」という内容でした。 私は「絵本」を取り上げ、中でも今回紹介しているこの作品の内容を踏まえて、「今読むからこそ、考えさせられる」ということを中心に伝えました。結果として、非常に良い反応を頂いており、このページ冒頭に書いたお言葉は、この時採用の方から実際に言われた言葉です。
 さて、採用の方はこの作品が取り上げる何に注目して、新人の研修会にふさわしいと感じられたのでしょうか。 興味を持たれた方は、ぜひ、ご一読くださいませ。

 

第82回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本 
  図書館 学生アルバイト 岡野 凛
  
私のオススメ
   『流浪の月』

   凪良ゆう著
   東京創元社  2019年 

  誘拐犯と被害女児。 あなたはこの言葉だけを聞いて、何を感じますか?どのようなイメージを持ちますか?
   15年前に起きた女児誘拐事件の被害女児・更紗は、昔彼女を家に招き入れた青年・文とある日を境に突如再会を果たします。
   "事件に巻き込まれた可哀想な子"、"酷いことをした事件の犯人"。誘拐事件の報道を見た多くの人によって貼られたレッテルは、何年経っても2人に付き纏います。 しかし、本人たちの中には、彼らにしか分からない"真実"がありました。恋人でも家族でもない、新しい愛情のかたちが "一緒にいる事は許されない" 2人の中にはあったのです。
   「流浪」とは、「あてもなくさまようこと。所定めず、さすらい歩くこと。」(精選版 日本国語大辞典より)。この本のタイトルにある思いは、きっと読後にじんわりと伝わってくるはずです。 2020年 本屋大賞受賞作であり今月実写映画が公開された注目作、ぜひ読んでみて下さい。

 

第83回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本 
  図書館 学生アルバイト 福田 倫世

  私のオススメ
   『常識のない喫茶店』

   僕のマリ著
   柏書房  2021年

 「ある日、嫌いだった常連の訃報を聞いたとき爆笑した。」
  勤務中のおしゃべり自由、髪型・髪色自由、接客も自由。失礼なお客さんと喧嘩しても、出禁にしても良い。「働いている人が嫌な気持ちになる人はお客さまではない」を理念に掲げる一風変わった喫茶店で働く著者の、(人によっては)不名誉なあだ名を付けられるほど変わったお客、一癖も二癖もある同僚たちとのエピソードを綴ったお仕事エッセイ。
  失礼な客、女性店員になめた態度をとる客、セクハラ、モラハラ、etc…。日々絶えない悩みの種にお困りの、あらゆるサービス業従事者のみなさん、「ただ働いているだけなのに、なぜこんな目に遭わなければならないのか」と疑問に思ったことはありませんか?そんな皆さんにおすすめしたい、読めば溜飲下がりまくりの一冊です。
  治外法権、世間のルールなど通用しない、異色の喫茶で繰り広げられる闘いの数々。狂っているのは店か?客か?店員たちの小さな抵抗の日々をお楽しみください。きっとあなたも、嫌な客に言ってしまいたくなります。「もう来ないでください!」と。

 

第84回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本 
  図書館 学生アルバイト 高村 未羽

  私のオススメ
   『崩れる脳を抱きしめて』

   知念実希人著
   実業之日本社  2017年

 過去に囚われて、金を稼ぐことが第一優先となってしまった医師である主人公は、脳腫瘍で余命宣告されている外の世界に怯えるヒロイン、ユカリと実習先の病院で出会う。過去にトラウマを持つ2人は最初はいがみ合っていたが、次第に心を通わせるようになる。しかし、ヒロインは亡くなってしまったと聞く。果たして本当に彼女は亡くなってしまったのか、本当ならどうして亡くなったのか。それを追求していく。
  ここだけ聞くとミステリーのようですが、この本はそれだけではありません。もちろん謎を解くことも大事ですが、それだけではなく2人の恋の行方も大きなポイントとなります。文庫本のあらすじの所には作者のコメントで「僕にしか書けない恋愛小説です」とありますが、まさにその通りの作品だと思います。医療ミステリー×恋愛という不思議な組み合わせをぜひ読んでみてください。

 

第85回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本 
  図書館 学生アルバイト 植木 香帆

  私のオススメ
   『満願』

   米澤穂信著
   新潮社  2014年

 2014年山本周五郎賞を受賞作。「このミステリーがすごい!」「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」の国内部門ランキングにて1位を獲得した作品です。『夜警』を筆頭に、人々の思惑・願いによって巻き起こる6つのミステリーが収録された短編集となっています。短編集なので、あまり本を読まない・長い話を読むのは苦手という方にもおすすめです。
 収録されている『柘榴』は、中学生姉妹を中心に展開されるミステリーで、姉妹は両親の離婚話をきっかけに、どちらにつくかを考えることになります。2人を溺愛している母親の一方で、家にも帰らず生活能力のない父。父親の魅力の虜になっていた姉妹は、裁判で父親に親権を得させるためにある手段をとります。しかし読者は物語の結末で少女の本当の「願い」を知ることになる―…。女性の思惑ひしめく、背筋も凍るミステリーとなっています。まだまだ暑いこの季節、ほの暗い王道ミステリーで涼しくなりませんか?

【出典表示】米澤穂信『満願』(新潮社刊)

 

第86回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本オススメ本 
  
図書館 学生アルバイト 村上 翔太
  私のオススメ
   『僕が愛したすべての君へ』
   
『君を愛したひとりの僕へ』
   乙野四方字著
   早川書房  2016年 

 まさかの二作品同時上映!?チェックするなら今!!
 選択肢がある時、迷ってしまうことってありませんか?例えば朝食。ご飯を食べようか、パンを食べようか。例えばジャンケン。どの手を出そうかな。私たちは日常的にその選択肢の中から一つを選んで生活しています。
 さて、ふとこう思う時ありませんか?「もしあの時、あの選択をしていたらどうなっていたのだろう?」 物語は「人々が少しだけ違う並行世界間で日常的に揺れ動いていることが実証された世界」。そんな世界で主人公の高崎暦(たかさき こよみ)が選択した2つの世界を描くSFラブストーリーです。
 この作品の特筆すべき点は、物語のキーでもある「並行世界」を表わすように2冊ともその1冊で完結していることです。『僕愛』では、両親の離婚を経て母親と過ごすことを選択した世界、『君愛』では、両親の離婚を経て父親と過ごすことを選択した世界を描いています。どちらの暦も恋をしますが、好きになる相手、悩みや葛藤、そして行き着いた答えが必ずしも同じとは限りません。この作品は2冊でまさしく表裏一体の作品になっています。正確に表すのなら『僕愛』が「明」で『君愛』が「暗」でしょう。対照的な主人公の愛を、ぜひ手に取って確かめてください。
 そして、冒頭でも紹介しましたが、この作品は10月7日に映画上映が決定しています。まさに予習するなら今がチャンス!です。そしてさらに、映画上映に伴い新冊として『僕が君の名前を呼ぶから』も発売されました!こちらでは、作品世界を楽しむためのキー人物ともなる栞(しおり)が生きたとある並行世界の姿が描かれています。お分かりの通り、今この作品が非常にアツいです。ぜひ、ご一読してみてください。
 ちなみに、読む順番の個人的オススメは『君愛』⇒『僕愛』です。並行世界の自分は、果たして自分なのでしょうか。

 

第87回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本

  図書館 学生アルバイト 岡野 凛
  私のオススメ
   『花束は毒』
   織守きょうや著
   文藝春秋  2021年 

 「良心があるのなら、結婚をやめろ」
 ある日、男性の家に届いた差出人不明の手紙。婚約者との結婚を控える中、不気味な脅迫状が定期的に送られてくる。そんな男性の力になりたい主人公の木瀬芳樹は、学生時代の先輩・北見理花が勤める探偵事務所に犯人の調査依頼を頼むべきだと助言するも、なぜか当の男性は調査依頼を渋ります。何か調査されては困る事情でもあるのでしょうか…。
  なぜ男性は探偵に調査を頼もうとしないのか、手紙の差出人とその目的は何なのか、徐々に明らかとなる予想外の真実に、しばらく鳥肌が止まらなくなります(経験談)。 誰も殺されない、誰も死なない。出てくるのは人間だけ。なのにとてつもなく背筋が凍る。『花束は毒』が持つ数々の罠に騙されないよう、注意しながらぜひご一読ください。

 

第88回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本

  図書館 学生アルバイト 福田 倫世
  
私のオススメ
   
『透明な夜の香り』
   
千早茜著
   
集英社  2020年 

 “香りは再起動のスイッチ”
 元書店員の一香がはじめた新しいバイトは、古い洋館の家事手伝い。そこでは調香師の小川朔が、幼馴染の探偵・新城と共に、完全紹介制の「香り」のサロンを開いていた。亡き夫の香りを求める女性の依頼や、匂いを手掛かりに行方不明の娘を探す案件など、風変わりなオーダーが次々に舞い込むその場所で、一香は自身の心の奥底に眠る記憶と向き合うこととなる...。
 時に郷愁にも執着にもなり得る、そんな「香り」の二面性が、登場人物たちの抱える秘密や欲望と交わりながら、繊細な文章で冷たく静かに綴られています。香りは、脳の海馬に直接届いて永遠に記録されるもの。この本から溢れてくる香りも、きっとあなたの中に刻みつくことでしょう。ぜひご一読ください。

 

第89回 物事をじっくり考えてみたい人にオススメ

オススメ本

  図書館 学生アルバイト 高村 未羽
  
私のオススメ
   
『母さんごめん、もう無理だ きょうも傍聴席にいます』
   
朝日新聞社会部著
   
幻冬舎  2016年 

 安倍元総理の暗殺で犯人の山上容疑者に多くの非難の目が向けられたのは新しい記憶ですが、果たして殺人をしてしまった人達は全て悪いのでしょうか?そういったことを問い直すことの出来る本です。
 この本は、朝日新聞の社会部が傍聴席で聞いた本当の裁判の会話や、そこに立つ被告人の行ったことを淡々と事実だけをまとめた本です。内容は、窃盗から殺人と幅広い罪状になっていますが、どれも重々しく、その人の人生を覗き見している気分になります。決して清々しい気持ちで終わるものでは無いですが、殺人とは何なのか、何が正しかったのかという事を考えるにはとても優れている本なので、時間と心に余裕がある人はぜひ読んでみてください。

 

第90回 絵画の魅力を知りたい、絵画に触れてみたい人にオススメ

オススメ本

  図書館 学生アルバイト 植木 香帆
  
私のオススメ
   
『怖い絵』
   
中野京子著
   
朝日出版社  2007年 

 美術館で見る絵画、書籍やテレビなどで見かける名画。皆さんはその裏側に込められた作者の意図や、おかれた環境を想像したことがありますか?絵画を見てすごいとは思うけど、いまいち魅力が分からない…。そんな人にお勧めしたい1冊です。本来、視覚で楽しむ絵画の目で見るだけではわからない魅力が、この本には詰まっています。
 表紙にもなっている、ラ・トゥールの『いかさま師』。この絵画には、トランプで賭博をする4人の人物が描かれています。1人の若者以外は皆、視線が横に流れており、怪しさが表現されています。横目遣いの3人にとって、若者は賭博におけるいいカモであることが想像できるそうです。絵の要である卵型の顔の女性、飲み物をつぎ、動きながら若者の手札を覗き見る給女、そして、背中に隠していたカードに手を伸ばすいかさま師。この若者は夢を抱き社会に出ますが、待ち構えていたのは一見上品な禿鷹の群れであることを後に知ることになります。
 絵画には文章以上の情報量が含まれています。その絵画を解説とともに追体験してみてください。視覚だけで得ることのできない数々の絵画の裏側を、皆さんも覗いてみませんか?