2009年の企画展示

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松本侑子氏公開講座記念企画展(2009年12月分)

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島根県出身である松本侑子氏は、1987年、「巨食症の明けない夜明け」ですばる文学賞を受賞された。執筆活動と同時に「赤毛のアン」の翻訳、文学紀行や旅行記、女性論や憲法論など、文学以外にも多くの著作がある。
今回講義をされるにあたり、著作を本学の図書館にご恵贈いただいた。全ての本にサインがあり、バラのシールが貼られてあった。何となくステキな香りがした。この細やかさはどこからくるのだろう。私が学生時代に『植物性恋愛』を読んだときの印象と違っていた。それは性という題材のせいかもしれないが、まだ恋愛というものがどういうものなのかわかっていない時に、その1冊だけで松本氏のイメージを勝手に作っていたように感じ、激しく後悔した。
この機会にご寄贈いただいた資料を読んでみた。学生時代に感じた印象は、どこかに吹き飛んでしまった。特に『赤毛のアン』は情景が浮かび、アンの喜びに満ちた生活が彩られていた。松本氏が2度カナダに行かれたことや原典を忠実に訳したこと、聖書やシェイクスピア等の引用部分を詳しく紹介された点が今までの訳者とは違うアンの世界観を物語っているのだと感じた。大変読みやすかった。 私が純真無垢な気持ちで読むことができたのは、サイン等の細やかな気配りがあったのも理由のひとつではないかと思う。
さて、今回の展示では松本侑子氏の公開講座を記念して、彼女の著作を展示する。講座の題材である赤毛のアンに隠されたシェイクスピアの謎とは何か?また、太宰治と心中を図ったとされる山崎富栄との恋と真実をどのように語られるのか、多くの方に知っていただきたい。


江戸の食文化(2009年11月分)

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「豆腐百珍」。これは、江戸時代にベストセラーになった料理書である。あまりの評判の良さに続編も刊行されたほど。その中身は、タイトル通り豆腐の料理法が百通り書かれている。例えば、「一 木の芽田楽 温湯を大盤に堪へ切るも串にさすも其湯の中にてする也 やはらかなる豆腐にても危くおつるなどのうれへなし 湯よりひきあげすぐに火にかくる也 -省略- 醴(あまざけ)のかた入れを二分どほりみそにすりまぜれば尤佳也(もっとよしなり) 多く入れば甘すぎて却てよろしからず云々・・・」とある。これは、現代にも在る料理で、他にもそのような料理が数多く書の中にある。
今日、私達が食べているものを考えてみると江戸時代に誕生したものが多いことに気付かされる。鰻の蒲焼、蕎麦、うどん、天ぷら、握り寿司などもそれだ。これらのことから分かるのは、江戸時代は、庶民層も食を楽しみ、さらには調理も楽しむ時代であったことだ。
江戸時代の絵画を見ていると、食べ物屋が軒を並べ活気ある町の様子が伺える。史料を読んでみると、江戸時代に調味料が普及し、今の和食と呼ばれるものが完成したことや東西の味の違いが定まったこと、お菓子や煎茶が庶民に広がっていった様子などを知ることができる。
飢饉や一揆など様々な社会問題を抱えていた時代ではあったが、基本的に長く平和が続いた江戸時代で日本料理の技術や食生活の在り方(1日3食の普及等)、食べ物屋など今日に伝わる日本の食文化の原型が定着したようだ。
このように江戸時代のことを調べていると、江戸時代にタイムスリップして行ってみたくなる。食文化だけでなく、様々な文化が発展して行った江戸時代には、そう思わせる魅力が充分にあると思う。


装丁(2009年10月分)

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 一つ想像してみて下さい。その本の表紙は真っ白、全く何も描かれていません。真っ白い画用紙の上に置くと、消えてしまいそうなくらい真っ白です。あなたはその本を手に取りますか?書店にそのような本が置かれていたら、興味本位で手に取るかもしれません。ただ、書店に並ぶ本の全てが真っ白だったなら、到底買う気にはならないと思いませんか?
 では、真っ白な本ばかり並ぶ中に一冊だけ、真っ赤な本があったとしたらどうでしょう。そして、その本の右上に、小さな緑色の葉っぱを添えてみます。その本の前に立ち止まった人は、もしかしたらクリスマスに関する物語の本か、特別な料理について書かれた本か・・・色々と想像して、思わず手が伸びるかもしれません。
 今度はその本に柔らかい布製の小さな人形を貼り付けてみたら?子どもならばきっとその本に駆け寄り、表紙にくっついた人形を何度も指で押しては笑顔でページをめくり始めるでしょう。
このように、本の表紙には作品のイメージを尊重しつつ、紙質や明るさ、文字のフォントを吟味し、読者に興味を持ってもらうにはどうすればいいか、さらに、本そのものを楽しんでもらいたいという装丁家(デザイナー)の気持ちが込められています。
今回の展示では、装丁の流れや歴史が書かれた本、表紙に工夫が見られる本、自分でできる本の作り方が載った本を紹介します。装丁とは、ブックジャケット(カバー)や表紙などの外装をデザインすること、また、本文や綴じ方も含めてデザインすることを意味します。今回は特に表紙に重点を置いて展示しています。
ちょっぴり残念なのは、図書館の本は損傷を防ぐため、装備をするのでカバーの裏側にある表紙を見ることができません。書店に行かれた時はそっとカバーをめくってみては?作品に対するデザイナーのこだわりが見られるかもしれません。


企業のPR誌 〜継続資料とは?(2009年9月分)

2009年9月企画展示 皆さんは「ご自由にお取りください」のコーナーを見たことはありますか?
このコーナーには多種多様な資料が置いてあります。フリーペーパーのように、比較的手軽に入手できる資料もありますが、図書館から寄贈依頼をしなければ入手できない資料もあります。
今回の展示では後者のような資料の中から、企業のPR誌を紹介します。特に、継続して刊行されている「継続資料」と呼ばれる小冊子(パンフレット)を集めました。
「継続資料」とは、同一のタイトルのもとに巻号が継続して刊行される「逐次刊行物」と、更新により内容に追加や変更はあっても一つの刊行物として維持されている「加除式資料」やウェブサイト等の「更新資料」とに分類されます。継続資料の良さは、出版されるまでに時間を有し厚さのある図書とは違い、企業の最新情報をより早く、そして手軽に入手できる点にあります。
今回紹介する小冊子(パンフレット)には、自社製品を使用して料理のレシピを紹介したものや京都の路地裏を散策する旅情報を載せたもの等、企業が社内や消費者に対して企業イメージを広く印象付けるために創意工夫されています。そのため、皆さんにも興味を持ってもらえるのではないでしょうか。ぜひこの機会に手に取ってみてください。


食育(2009年7月分)

2009年7月企画展示去る6月13日・14日、第4回食育推進全国大会がくにびきメッセで開かれました。学生のみなさんも運営に関わり、食育の更なる普及につながりました。
ただ、皆さんも大会に参加してみて、食育の内容はとても広いことが分かったと思います。
昔の日本は、自分の家や近隣で採れた野菜を食べ、近くで獲れた魚や鳥獣を調理し、冬に備えて保存食を作って過ごしました。しかし現代の日本は、食料自給率が40%を切るまでになり、輸入に頼っている食生活を送っています。
近年、輸入餃子の遺物混入事件や残留農薬による食品汚染、また国内でも食品の製造表示偽装事件などで、食の安心・安全が叫ばれています。
そこで今回は、
       ・食の安心・安全
       ・地産池消
       ・郷土料理
を中心に、関連書籍をご紹介します。
皆さんは大学で教わった食育を基礎に、これから社会に出てさらに実践していく身となります。
食育推進全国大会での経験を活かし、食への関心を持ち続けてください。


裁判員制度を知ろう(2009年6月分)

2009年6月企画展示5月21日から裁判員制度が始まりました。
これまでの裁判と違う点は、裁判員制度の対象となる事件は限られますが、「法律の専門家である裁判官3名により執り行う裁判」から、「裁判官3名に一般の有権者から選ばれた6名を加えた9名により執り行われる」点です。国民の参加により、より民意に近い判決が出ること、審議期間の短縮化など、日本の司法制度を改善させる糸口になることが期待されています。その反面、素人に有罪・無罪の判断が可能なのか、疑問の声もあります。
 裁判員制度について、小説家、乃南アサ氏は、次のように言っています。「私たちの大部分は日頃、自分は犯罪などとは無縁だと信じて生きています。毎日のように新聞やニュースで凶悪な事件が報じられていても、どこか自分とは無関係の、遠い世界の出来事のように思ってしまうのが普通ではないでしょうか。(中略)ですが、これからは当事者ではなく、違う形でも事件や犯罪に関わる可能性が出てきました。それが裁判員制度です。否応なく一つの事件と向き合わなければならず、無関心にやり過ごすことなど出来ないときがやってきます。」(『犯意』新潮社発行より)
 このように、賛否両論ある制度ではありますが、私たちにも関係のある法律として、裁判員制度に関する資料を集めました。制度の成り立ちや疑問、今後の課題など、私たち自身の問題として考えてみませんか。


ホーランエンヤと島根の祭り(2009年5月分)

2009年5月企画展示今年は12年に1度の「ホーランエンヤ」が開催されます。
「ホーランエンヤ」とは正式名称を「松江城山稲荷神
社式年神幸祭(まつえじょうざんいなりじんじゃしきねん
しんこうさい)」と言い、松江市にある城山稲荷神社から
隣の東出雲町にある阿太加夜(あだかや)神社まで御神霊
を船でお運びし、1週間にわたって五穀豊穣等を祈願した後再び城山稲荷神社へお帰りになる船渡御祭(ふなとぎょさい)です。
「ホーランエンヤ」は「豊来栄弥」「宝来遠弥」とも書かれ、
五穀豊穣への願いが込められているとも言われています。
櫂伝馬船(かいでんません)と呼ばれる曳船(ひきぶね)を漕ぐ際、「ホーランエーエ ヨヤサノサ」
と唄いながら漕ぐ様子から、松江の人々はこの祭りを「ホーランエンヤ」と親しみを込めて呼んでいます。
この船唄も、五大地(ごだいち)と呼ばれる櫂伝馬船を所有する五つの地区ごとに独特の唄を持ち、節回しも違います。
5月16日の渡御祭(とぎょさい)と5月24日の還御祭(かんぎょさい)には、櫂伝馬船など約100隻
が連なり、1kmにも及ぶ大船団が大橋川を往来します。この荘厳な船神事は、大阪の天神祭りや
広島の厳島神社管弦祭と並び、「日本三大船神事」と称されています。櫂伝馬船上では船の舳先(へさき)で勇壮に踊る剣櫂(けんがい)や、船尾で女性の姿をして踊る采振り(さいふり)が観る者を魅了します。
今回は「ホーランエンヤ」を中心に、島根の祭りに関する資料を展示しました。「ホーランエンヤ」の歴史や見所、地域の人々の取り組みを紹介するとともに、島根独特の祭りを紹介します。12年に1度の機会に巡り会えた皆さんも、ぜひ「ホーランエンヤ」を楽しんでいただきたいと思います。


紙の辞書をひく(2009年4月分)

2009年4月企画展示 ここ十数年の間に私達を取り巻く情報環境が大きく変化し、情報検索の際に冊子体の辞書や白書等の紙媒体のものより、オンラインサーチエンジンや情報検索システム、CD-ROM等の電子媒体を使われることが多くなりました。
 確かに電子媒体は、大量の情報の中から必要な情報を短時間で検索、入手でき、紙媒体では不可能な相互参照もできます。そして何よりも速報性があります。
 しかし、その一方で多くのデータベースは、データの収録範囲が1970年前後になるのでそれ以前の情報を調べるのは、困難になります。ウェブサイトの情報も簡単に大量の情報を得ることができますが、その情報の根拠、証拠が確実でないため研究資料としては、参考にならないことが多いでしょう。
 一方、本(紙媒体)は、検索に時間と手間がかかります。そして、鮮度を必要としている情報を検索する場合には、ふさわしくないかもしれません。
 しかし、本では多くの項目を見渡すことができる一覧性があり、読みやすさもあります。また電子媒体と違い古い文献検索も可能で、本でしか検索することができないものもあります。読んでいるその場で付箋を貼ることも本だと可能です。情報の価値を推測することも本だと割と容易にできます。
 今回は、色々なジャンルの紙媒体での事典、辞書を展示しています。情報検索の利用としてはもちろんのこと、読み物としても楽しく読んでもらえるような本も展示しています。この機会に是非手に取って見て下さい。新たな発見があるかもしれません。


洋書の魅力(2009年2月分)

2009年2月企画展示 洋書とは、言うまでもなく「日本以外で出版された出版物、外国語で書かれた出版物」のことです。英語、フランス語などヨーロッパの言語で書かれたものの方が洋書のイメージが強いかもしれませんが、中国語、アラビア語などアジアやアフリカの言語で書かれたものであっても洋書のカテゴリーに入ります。
 つまり、「洋」とは「海外」「外国」の意味でもあり、東洋、西洋の両方を含みます。
洋書は、馴染みが薄いかもしれませんが、日本語に翻訳されたものは数多く図書館でも扱っていますし、多く読まれています。
 しかし、洋書でこそ楽しめる本も意外にあるのです。例えば「Never Tease a Weasels」という英語で書かれた洋書があるのですが、その内容は、『いたち(ウィールズ)をからかう(ティーズ)のは絶対にやめた方がいいよ。子猫(キトン)に(ミトン)を、おおしか(ムース)に(ジュース)を、キツネ(フォックス)に(ソックス)をあげるのはいい』といった内容になっていて韻を楽しむように作られています。日本語訳されたものを読んでもそのことには気が付きませんよね。
 最近では、洋書で絵本の読み聞かせを日本語に訳されたものではなく、洋書でするというのも定着してきているようです。  
 今回の展示では、気軽に読めそうな洋書を中心に日本語でも既に翻訳されている本、逆に英訳された本、絵本等を展示しています。教科書や試験問題のように正確に解読する必要はありません。多少、単語が読み取れなくても充分理解ができ、楽しめると思います。この機会に是非手に取ってみて下さい。


デザイン(2009年1月分)

2009年1月企画展示 一口にデザインといっても、世の中にはたくさん
 のデザインが存在します。インテリアデザイン
 ・建築デザイン・服飾デザイン・環境デザイン・・・。
 また、誰にでも使いやすい家具や食器、文具などをデザインしたユニバーサルデザインも注目されています。
 日本では古くから「意匠」と呼ばれ、生活に根付いた意匠から美術の域にまで達した意匠まで様々な形で現代に伝えられていますが、最近では手ぬぐいや浴衣の柄などに昔の意匠を大胆に取り入れ、若い人にも人気となっているものもあります。
 大量生産・大量消費の時代から環境に配慮した循環型社会を目指している現在、私たち消費者も機能性・耐久性にすぐれたデザインを見極める力が求められています。今回の展示をきっかけに、デザインについて関心を持っていただけたらと思います。