バックナンバー 第201回~第210回

第201回 読んだ本の感想を誰かと共有したい人にオススメ

おススメ本
  松江キャンパス 図書館専門員 北井由香
  私のオススメ
  『母性』
   
湊かなえ著
   新潮社 2012年10月発行

 10月20日午前6時ごろ、Y県Y市**町の県営住宅の中庭で、市内の県立高校に通う女子生徒(17)が倒れているのを、母親が見つけた。「愛能う(あいあたう)限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」…。
 警察は事故と自殺の両方で原因を詳しく調べている。果たしてこれは、事故なのか、事件なのか、自殺なのか…。なぜこんなことになってしまったのか。

 物語は、ここから、過去を遡る形で物語は進められます。母の手記と娘の回想がそれぞれで語られ、徐々に真相が分かり始め、そして、ラストでついに真相解明!!と言いたいところですが、それで終わらないのが湊かなえ。

 それは、こんなことがあったからです。
 先日、この本を題材に5名で読書会※1)をして、この真相について語りました。しかし、それぞれが辿り着いた真相が、全然違ったのです。読んでいる本は、皆、全く同じです。それなのに、なぜなのでしょう?つまり、この本の解釈がそれぞれ違ったのです。この人は、善い人だという人もいれば、いやいや悪い人だよ、という人もいたり、この人は、おかしな人だという人もいれば、いやいやただの犠牲者だよ、という人もいたり、結局、一致した真相に辿り着けずに終わりました。 けれども、そもそもこの本の中に、真実があったのでしょうか?
 ※1)同じ本を読んで、その本について語り合う会のこと

 皆さんは、この物語をどう読みますか?真相は、一体どうだったのだと思いますか?皆さんが辿り着いた真相を是非教えて下さい。読む人によって真相が変わる、そんな作品をどうぞご一読ください。  

 

第202回 ターシャ・テューダーについて知りたい人にオススメ

おススメ本
  松江キャンパス 図書館司書 野々村 佳緒里
  私のオススメ
  『ターシャ・テューダーの人生』
   
ハリー・ディヴィス著
   相原 真理子訳
   文藝春秋 2001年11月発行

 ターシャ・テューダーは、アメリカのさし絵画家、絵本作家で90冊以上もの作品が出版されている偉大な人物であり、園芸家としても有名な人物です。
 私は、友人に誘われて行ったターシャ・テューダー展で知った、彼女が作り上げたガーデン、その中で営まれている彼女のライフスタイルに強く心を惹きつけられファンになりました。
 そのため、『ターシャの庭』(メディアファクトリー、2005年)など彼女の庭について書かれている本を紹介したい気持ちもありますが、本書の序文に「ターシャ・テューダーの作品とその生活とを分けるのは、不可能に近い。」とあるように、ターシャについて知りたい人には、彼女の生活、人生について知ってもらいたいという思いから本書を紹介します。
 ターシャの研究家で、ビジネスパートナーであった著者によって書かれた本書では、素敵な庭にいるかわいいおばあさんというような印象のターシャではなく、彼女の人間らしい一面を知ることが出来ます。強い思いとたいへんな努力によって築かれたターシャの人生に触れてみてください。 


 

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