私のオススメ本

 

第133回 島村抱月を知らない人にオススメ


女優
   図書館司書 北井 由香

   私のオススメ
   『女優』

    渡辺 淳一 著
       集英社 2014年5月発行


  現在、図書館では、『島村抱月の出身地はどこ?~没後100年展示~』の展示を行っています。今回は、この島村抱月を語る上で欠かすことのできない人物「松井須磨子」について書かれた本を紹介します。タイトルは、『女優』この女優こそが松井須磨子です。
  松井須磨子は、本名、小林正子。明治19年3月8日、長野県松代(まつしろ)に生まれました。当時としては、珍しい美容整形手術を行ってまで文芸協会(明治39年、坪内逍遥・島村抱月らを中心に、演劇・文学・美術などの改革を目的として設立された団体)の試験に臨み、文芸協会演劇研究所第一期生となり、32歳で亡くなるまで女優として舞台に立ちました。須磨子は、他人の存在など眼中になく、自分のやりたいことだけをやり、他人の言うことをあまり気にせず、何を言われても平然とし、例え、厭なことを言われても、次の日になるとケロリと舞台に立っている自由奔放な女性として描かれています。
 しかし、女優としては、とても成功しました。帝国劇場で上演されたトルストイ原作『復活』での劇中歌『カチューシャの唄』は、大ヒットし、その後、日本全国のみならず、朝鮮、満州、台湾でも巡演されました。
 そして、この松井須磨子の傍にいつもいたのが、島村抱月です。妻子がある身でありながら、須磨子と恋愛関係になり、須磨子の支えとなりました。須磨子は、そういう性格のため、常に周りに敵を作り、孤立していました。理解者は、抱月だけでした。須磨子がどんなに我儘をいっても受け止めてくれ、支えていてくれる抱月がいたからこそ須磨子は女優でいられたような気がします。
 抱月の後を追って亡くなった須磨子の遺書に書かれていた願いは、とうとう叶うことはありませんでしたが、女優としての人生を思う存分、自由に生きさせてくれた抱月に出会えた須磨子は、幸せだったのかもしれないとそう思います。

  〈参考文献〉
    "ぶんげい‐きょうかい【文芸協会】", デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2018-09-07)
  
 

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